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ぎじゅつのてつがく

技術の哲学

戸坂 潤

「技術の哲学」時潮社、1933(昭和8)年12月13日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,443 字 · 164 页

青空文庫

一体主に一個人の意匠だけで仕上げられるような作品は今日の資本主義ではあまり大した意義のある製品ではあるまい。建築やキネマが、誰か一個人の個性を持っているとは考えられない。例えば装飾の具体的な各部分や俳優の一つ一つの表情は、すでに設計者や演出家の個性の云うことばかり聞いてはいない。それにも拘らず建築やキネマは、個性と云ってもよいなら立派に夫々の一つの個性を持っている。だから個性とかいう又は天才とかいう根本概念を改造してかからなければ、そういう概念はオリジナリティーを説明するには役立たない。

それから又、オリジナリティーを創造という概念で説明する場合がある。社会主義の社会は創造的活動に不利だという理由で、夫はオリジナリティーの圧迫される社会だと云う。一つの社会の実現そのものが大きな創造だという事は別にしても、この社会で圧迫されるだろうと想像される創造なるものが、この種の思想家の頭の内に於ては他愛もない通俗観念に過ぎないのである。文学的想像力の所産を創造の尤なるものだと考える文学者達は別としても、彼等は高々要するに眼新しいものの出現や思い付きの所産を創造と呼んでいるに過ぎない。