轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

おしえのきせき

押絵の奇蹟

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,749 字 · 114 页

青空文庫

ですから私はその運命とお別れを致したいためにわざわざ九州まで参りましたので御座います。早かれ遅かれ助からぬ生命と存じまして……。

けれど、その二枚の押絵をあおのいて見ておりますうちに私は何かしら、或る気高い力に引き立てられて行くような気持ちになりました。

その中の一枚は八犬伝の一節で、犬塚信乃と犬飼現八が芳流閣の上で闘っておりますところで、今一つは阿古屋の琴責めの舞台面になっております。どちらも大きな硝子張りの額ぶちに入れてあります上から今一重、頑丈な金網で包まれて、絵馬堂の西の正面に並べられているので御座いますが、それを見上げておりますうちに、これは、もしかしたら、その押絵の中に籠もっております、貴方様と私との運命を包む神秘の力が、今一度新しく、私の心に働らきかけているのではないかしらと思いましたくらい、私の身うちがゾクゾクと致して参りまして、何かしら不思議なお酒に酔っているような気持ちになってしまったので御座いました。

その時ほどに運命の力というものをシミジミと嬉しく、楽しいものに感じましたことは私の一生のうちに一度も御座いませんでしたでしょう。