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おしえのきせき

押絵の奇蹟

夢野 久作

「新青年」1929(昭和4)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 58,749 字 · 114 页

青空文庫

これ即ち法医学の濫觴にして、律法の庭に医師の進言の採用せられし嚆矢なりと聞けり。

◇訳者曰く=支那に伝われる胎教なるものも、このヒポクラテスの見地より見る時は強ちに荒唐無稽の迷信として一概に排斥すべきものに非ず。或は、最も高等なる科学的の研究手段によりてのみ理解され得べき、深遠微妙なる学理原則のその間に厳存せるものなしと云うべからず。心すべき事にこそ。

又、次に掲ぐるは、今より約二十年前(西暦一八六六年)我英国の法曹界に於て深甚なる注意の焦点となり、海外の専門雑誌にも伝えられし事件なれば、或は記憶に新なる読者もあるべけれども、未知の人々のために抄録せむに、蘇格蘭の片田舎(地名秘)に住める貴族にして赤髪富豪のきこえ高きコンラド(仮名)従男爵というがあり。年四十に及びて数哩を隔てたる処に在る「鷹が宿」という由緒ある家柄に生れしアリナ(仮名)と呼べる若き女性を夫人として迎えけるが、この女性は元来絶世の美人なりしにも拘わらず、何故か八方より申込み来る婚約を悉く謝絶しおり。尼となりて修道院に入らむと、志しおりしものなりしを、八方より手を尽して、辛うじて貰い受けしものなりければ、従男爵の満悦譬うべくもあらず。