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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页

青空文庫

それはとんでもない思い違いで、ほとうに発狂しているのではないかという恐ろしい疑惑に責められる心理をえがいたものである。そのハッと錯誤に気づく瞬間に、一つの大きなスリルが感じられるのはもちろんだが、私の忘れられないのは、それよりも殺人の動機となる一つの場面である。そこは停車場であった。汽車が出発しようとしている。大時計が何時何十分を示している。彼は思いきって恋人に意中をうちあける。脂汗を流しながらうちあける。すると相手の女はさも面白そうに笑い出す。いつまでも笑い続ける。まっさおになるほどの侮辱だ。その時、彼はどうしたか、怒って立去ったか。涙ぐんでさしうつむいたか。いやいや、彼も同じように笑ったのである。その笑いこそ生涯忘れることの出来ない笑いであった。そして、その彼自身の笑いゆえにこそ、ついに殺人罪をおかすにいたったのである。この主人公のあまりにも残酷な笑いが、私には一つの大きなスリルとして感じられた。必ずしも恐怖のスリルではない。しかしそこから受けるゾーッと水をかけられたような感じ、ギョッと動悸の変調をきたすような感じ、その性質は、お化けのこわさとまったく別種のものとは考えられないのである。