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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页

青空文庫

不審をいだいた人々が、合鍵がないので、ドアをうち破って室内にはいって見ると、死体が横たわっている。ところが、不思議なことには、犯人の姿がどこにも見えない。内部から締りをした部屋だから、犯人の逃げ出す道はどこにもなかったはずだ。よく調べて見ても、天井にも、壁にも、床板にも、隠し戸などは全くない。暖炉の煙突は狭くて幼児でも通りぬけられない。換気窓も同様に狭い。人間一人煙のように消えうせるか、ナメクジのように伸縮自在のからだになって、ドアの下部の隙間からでも這い出したとしか考えられない。

実に不気味な、不可思議な謎である。もしこの全く不可能にみえる謎を、合理的に解いてみせることができたら、どんなに痛快だろうというのが、小説としての密室トリックの起りである。探偵小説は、一見不可能に見える異状な謎を、機智と論理によって、明快に解いてみせる面白味が中心となっているものだが、そういう興味の典型的なものが、この密室事件なのである。文章で描かれた不可能な情況というものは、どこかに隙間があるように思われ、確固不動の感じを与えにくいのだが、密室となれば、それが幾何学の図式のように具体的で、曖昧なところが少しもなく、不可能感を最も明確に読者に伝えることができるという特徴がある。