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たんていしょうせつのなぞ

探偵小説の「謎」

江戸川 乱歩

1 奇矯な着想「オール読物」文藝春秋、1954(昭和29)年10月号<br>2 意外な犯人「週刊朝日 推理小説特集号」朝日新聞社、1955(昭和30)年10月10日<br>3 兇器としての氷「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1952(昭和27)年3月復刊号<br>4 異様な兇器「読切小説集」テラス社、1953(昭和28)年11月増刊<br>6 隠し方のトリック「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年8月号<br>7 プロバビリティーの犯罪「犯罪学雑誌」日本犯罪学会、1954(昭和29)年2月号<br>8 顔のない死体「探偵倶楽部」共栄社、1952(昭和27)年5月号<br>9 変身願望「探偵倶楽部」共栄社、1953(昭和28)年2月特大号<br>10 異様な犯罪動機「宝石」岩谷書店、1950(昭和25)年8―11月号<br>11 探偵小説に現われた犯罪心理「文化人の科学」、1947(昭和22)年3月号<br>12 暗号記法の種類「宝石」、1953(昭和28)年9・10月号「類別トリック集成」の一部<br>13 魔術と探偵小説「新青年」、1946(昭和21)年10月号<br>14 明治の指紋小説「宝石」、1950(昭和25)年12月号<br>15 原始法医学書と探偵小説「自警」、1951(昭和26)年9月号<br>16 スリルの説「ぷろふいる」、1935(昭和10)年12月号<br>「類別トリック集成」目次「続幻影城」早川書房、1954(昭和29)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,820 字 · 235 页

青空文庫

探して見ると、夢と同じ地下墓地もちゃんとそこにあった。夢と現実のふしぎな一致。男爵は好奇心にひかれた、懐中電燈をつけて、その墓穴へはいってみないではいられなかった。夢と全く同じことを繰り返すという一種異様の興味が彼をそそのかしたのだ。彼は墓穴の奥へ奥へと進んで行った。そして、ハッと思うと、何かにつまずいて、突然足の下の地面がなくなり、そこにあった古井戸におちこんで行った。助けを呼んでも人はいない。男爵はついにそこで絶命してしまう。

こうして伯爵は復讐の目的を果たした。彼の夢物語は作為のウソで、実は数日前、彼自身その墓穴を見物したことがあり、その奥の古井戸のてすりが、古くなってこわれていることをチャンと知っていたのだ。作者は「これが果たして殺人罪といえるだろうか」と、それを疑問符つきの題名としたのである。

日本では谷崎潤一郎氏が、私のいわゆる「プロバビリティーの犯罪」に先鞭をつけている。同氏の「途上」という初期の短篇がそれだ。夫が妻を殺そうとして、全く犯罪とならぬ手段を、いろいろ考える。暖房のガス管の開閉ネジを、細君の寝室の人の足にさわりやすい所に取りつけさせ、女中がウッカリそのそばを通って、着物の裾がさわり、ネジが開くことを予期するとか、自動車が衝突した場合、右側の座席にいた人が、傷を受ける率が多いという