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たんていしょうせつだんのしょけいこう

探偵小説壇の諸傾向

平林 初之輔

「新青年 第七巻第三号新春増刊号・探偵小説傑作集」1926(大正15)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,887 字 · 12 页

青空文庫

しかし、その当時の印象と「赤いレッテル」から受けた印象とはだいぶ相違している。「赤いレッテル」のスタイルには、もう角がなくなっている。しかし、読んで明るい感じがする点は同じだ。精神病理的作品を読んだあとでこれをよむと重苦しい酒場の中から、せいせいした戸外へ出たような感じがする。あっさりした、それでいてかなり厚味のある筆触で叙述をすすめて最後の場面で軽いウイットでしめくくってあるところは余裕のある書きぶりである。もう少し、蒸留し、圧縮して陰影をくっきりさしたら、軽いながらも上乗の短編となったことと思う。

甲賀三郎氏の名作という評判のある「琥珀のパイプ」は私は残念ながら読んでいない。しかし氏の作品では、「大下君の推理」「空家の怪」「ニッケルの文鎮」その他名は忘れたが幽霊のことをかいた怪談めいたもの、乞食の出てくる話で、最後のシーンが丸ビルか何かになっている話などを、ちょっと回想しただけでもおぼえている。氏はいろいろな材料を色々な手法で書きこなす人であるが、アブノーマリティ・ハンターというような一面だけはないように思われるから、前の分類に従えば健全派に属すべきであろう。