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せっぷん
接吻
江戸川 乱歩
「映画と探偵」映画と探偵社、1925(大正14)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,279 字 · 13 页
こいつは俺のしくじりかな。宗三あまりの事にがっかりした。
他人の写真だと早合点したのは飛んだ間違いで、お花が宗三恋しさの余り、彼宗三の写真に接吻したり抱きしめたりしていたのだとすると、こんなひどい間違いはない。ゾクゾクと嬉しがっているべき場合に、見当違いの癇癪を立てて、取り返しのつかぬ辞表まで書いたとは。
さあそこで、主客顛倒である。一挙にして頽勢を挽回したお花は、今度こそ本当に泣き出した。
お役所を止して明日から何とする積りだ。この不景気に直様口があるではなし、そうかといって、遊んで食える身分でもなし、あなたもあんまり向う見ずだ。それに、私が村山家へ出入りするといってお怒りなさるけれど、これもみんなあなたに出世させ度いばっかりじゃありませんか。誰があんな家、進んで行き度いことがあるものですか。ひとの気も知らないで。といって恨む。怨じる。歎く。それはそれは。
山名宗三、今は一言もない。そればかりか、さしずめこれからの身のふり方に困じ果てた。「すまじきものは嫉妬だなあ」彼はつくづく嘆じたことである。
だが、読者諸君。男というものは、少々陰険に見えても、性根はあくまでお人好しに出来ているものだ。