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すいりしょうせつろん
推理小説論
「新潮 第四七巻第四号」1950(昭和25)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,385 字 · 15 页
高木、島田両新人は、純粋に推理作家で、怪奇抒情趣味のないところはたのもしいが、妙に雰囲気をだそうとするのが、先ず第一の欠点。だいたい文筆に未熟のうちは、純文学の場合でも、妙に雰囲気をだしたがるもので、文章がヘタだから、尚さら、ヘキエキさせられる。しかし、これは熟練によって、次第に非を自得するに至るものだから、決定的な欠点ではない。文章のヤリクリで雰囲気をだそうとする努力は無用であるから、捨て去るがよい。横溝君も雰囲気を文章でヤリクリ苦面する傾向が強いが、筆力が逞しいので、キズにならず、読ませる。終戦前の横溝君は文章がヘタで、この雰囲気ごのみ、怪奇ごのみ、読むに堪えない作品ばかりだったが、終戦後は見ちがえる成長ぶりで、差が激しいので、いささか呆れる程である。年期をいれて、こんなに生長するということは尊いことで、後進に勇気を与えることでもある。
横溝正史の雰囲気好みは性格的なものであるが、高木、島田両君はそうでないようだから、雰囲気はサラリとすてて、クリスチー女史の簡潔軽妙な筆を学んだ方がよい。クリスチーは私にとっても師匠なのである。
ほかに川島郁夫という新人が、筆力も軽妙、トリックの構成も新味はないが難が少く、有望である。