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すいりしょうせつろん

推理小説論

坂口 安吾

「新潮 第四七巻第四号」1950(昭和25)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,385 字 · 15 页

青空文庫

これは高級娯楽の一つで、パズルを解くゲームであり、作者と読者の智恵くらべでもあって、ほかに余念のないものだ。

しかし、日本には、探偵小説はあったが、推理小説は殆どなかった。小栗虫太郎などはヴァン・ダインの一番悪い部分の模倣に専一であって、浜尾四郎や甲賀三郎の作品も、謎解きをゲームとして争う場合の推理やトリックの確実さがない。終戦前の探偵文壇は怪奇趣味で、この傾向は今日も残り、推理小説はすくないのである。

近代文学ではヴォルテールの「ザジッグ」などが素人探偵のハシリかも知れないが、ザジッグが探偵眼を働かせると女房の間男を発見するていのニヒリズムの産物で、探偵小説ではない。

探偵小説の祖はポオだが、ドイルのホームズ探偵までは、推理小説の初期である。

ドイルまでの世界は今日の日本では、捕物帖に移植されている。捕物帖には指紋や科学的な鑑識は現れないが、推理やトリックの手法はドイルで、ドイルは捕物帖の祖であり、推理小説よりも捕物帖的である。

今日の推理小説の形式は、ガボリオのルコック探偵から始まっている。これが「黄色い部屋」のルレタビーユに発展して、推理小説の現代式の骨格やトリックの在り方は、ほゞ確定したようである。