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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
昭夫と治郎とは、その盥をめぐり、バケツのまわりをかけまわっている。子供の叫び声と吹きつけられる大雨のザッ、ザザッという天地いっぱいの音をきいていると、ひろ子は子供時代を思い出した。大雨のときうちの中はいつもうす暗かった。すこしずつすかした雨戸の間から雨がふりこんで古い廊下がぬれていた。ひろ子と二人の弟たちとは、小さい三つの顔を一つずつ雨戸のすき間から覗けて、誰が一番長く雨に顔をたたかれて平気でいられるか、競争をした。それから、濡れている廊下を片足ですべった。昼間の薄ぐらさ、ひどい大雨の音。むし暑さ。それらは、稚いひろ子を興奮させ、どきつかせた。子供らのおまるのわきに、夜じゅう豆ランプがついていて、いつもぼーっと雨戸についた地震戸の棧を照していた。
今にも消えそうで消えない電燈の下で、落付かない夕飯を終った。
八時すぎになって、前の沢田へふるいをかえして貰いに行ったつや子が、傘をたたみながら、あわただしく入って来た。
「おばあちゃん、川がおごりよりますて」
おこったように、登代が、
「どうしょうぞ!」
と云った。
「二十年も水がおごるようなことはありゃせんじゃったのに」