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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
立木を伐採したままの赭い地肌、真新らしいのにもう羽目がそりくりかえって、或るものは脱れている粗末な工事。西日ばかりは午後から暗くなるまでさし込むかわり、どんな夏の夕風もそこまでは決して入って来ることのなさそうな山懐に、せまい板のつき上げ窓が無数に並んで見えている光景は、通りがかりのものをさえ息苦しくした。
「あすこへ、人間を入れるつもりだったんだろうか!」
「徴用で地方から来る若い者の宿舎にするつもりでありましたろう」
「どこの?」
「そりゃ、工廠でありますよ」
縫子は落付いた嫌悪にみちた声で答えた。
「この辺で工廠に関係ないものは一つもありません」
それは、ありませんというより、あり得ませんという風に響くのであった。
低く高く遠近の山を見晴らし、すがすがしい松林を眺め、四周は温和な海近い山あいの自然だから、その真中に暴力的に出現している高い新道は、いかにも一路がむしゃらというこころもちを与えた。旧道は、この地域の人々が昔からその生活の必要につれておとなしく、細く、山裾をまわり、川に沿い、坂をのぼり下って踏みかため、ずっと低い地点にうねっているのであった。