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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

二十四五になって家にいる娘は、縫子一人とさえ云えた。兄を出征させているその縫子は、空襲の余波で瓦がみんなずりこけたわが家の屋根に登ってそれを修復した。

新道が山の切通しを抜け切ったところに、新しい朝鮮人部落が出来ていた。長いきせるをくわえた二人の老人が、部落のはずれにしゃがんで、のんびりした声で話している。一人の方が珍しく紗の冠をつけて、黒い紐を黄麻の服の胸の前に垂らしていた。そこだけ眺めていると、いつか絵で見た京城かどこかの町はずれのような印象である。

田を埋め、山を切って一直線にのびて来た新道は、一里余来たところで東西に走る新設の大道路と丁字形に合した。トラックの轍の跡でほじくりかえされている泥濘の道は、ここから堂々アスファルトの大道となって、工廠のぐるりにめぐらされ夫々の門に向っているのである。が、

「これからは、道がようなりますよ」

と縫子が教えた大道路へ出て、おどろきは却って深められた。

五年前、ひろ子が懐しく眺めてとおった山峡の三つの小さい沼はどこにもなくなって、赭むけにされた山頂に掘立小舎と官舎があり、その頂上に貯水池が、作られていた。