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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
この理不尽な法律が、有罪とすれば、たとえば重吉の母にしろ、やはりそれはわるいこと、こわいことと考えずにはいられなくて、そのなげきを和らげ、息子への信頼と希望をたもたせるために、ひろ子はこれまで十何年もの間、どんなに数々の言葉と心づくしを重ねて来ただろう。
今、治維法関係の思想犯は解放するという記事をよんで、ひろ子は自分にとって最後の、そしてもっとも耐えるに難い苛責がここに在ることを感じた。ポツダム宣言が受諾されたばかりのとき、ひろ子は、簡明率直な歓喜にうたれた。ふるえる思いで、このニュースをうけとった重吉の心のうちを思いやり、いつ帰れるか、いつ帰るだろう、網走へ迎えに行って、一緒に海をわたって帰って来て見たい。そう思いつめた。
時がたち、一ヵ月もすると、第一、ポツダム宣言を実行するにしては余りいかがわしい政府が居すわりつづける事に懐疑をもちはじめた。本当に、治安維持法は廃止され得るのだろうか。いつ? どのようにして? 永年苦しめられている日本のあらゆる進歩的な人々が、同じ感じをもった。そして、渇望のあらわれた数千万の目で、前途を見守っていたのである。