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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
定刻までに裁判所へ行っていた永田さんから、中止の電話がかかった。ひろ子は、持てあつかっていた鉄兜を肩からおろし、もんぺをはきかえた。そのうち、空襲警報が警戒警報にかわった。すると、またベルが鳴って、裁判所では、急に開廷することにきめたからいそいで来るようにと知らせて来た。
「何と意地わるなんでしょう。家族が間に合わないと知れているのに――」
「私の方で出来るだけ時間をはかっていますから、ともかく早くおいで下さい」
ひろ子の住居から裁判所までは一時間かかった。歩いて、それから都電にのって、また歩いて、その間にかかる時間は、ちぢめようにもほかにてだてはないのであった。ひろ子は、本当に息をきらして、裁判所の三階にある公判廷に入って行った。
開廷されていて、ほそおもての裁判長が何かを読み上げていた。最前列に重吉がかけていた。いつもは離れたところにいる二人の看守が、きょうは左右について同じベンチにいる。ひろ子は、永田さんのうしろにかけた。ガランとした公判廷にいるのは、それぎりの人数であった。
裁判長が読み上げているのは、判決言渡しの理由をのべた文章であった。きいていて、ひろ子は、奇怪な気がした。