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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

「大丈夫よ、この位」

「ここまで来れば、三分の一は来よりましたよ」

しばらく進んで、来るときも通った切通しにかかったとき、縫子は、

「もうあと四十分ばかりでありますのう」

と云った。

「一足一足、歩くのって、何て手間のかかることだろう!」

一足の幅の小ささと道のりの長さとを、ひろ子は苦しく対照して感じるのであった。同じ道を往きに通ったとき、ひろ子は一つ一つとこまかに周囲を眺め、自分たちの歩いている新道の、無慈悲な直線がその左右に展開している生活破壊に目をとめた。今、同じ道の上を逆行してゆくひろ子に、近い田畑、飯場、つらなり重った西国の山々は、まるで一様の緑色にとけ流れて感じられた。ひたすら歩いているひろ子の足は、思う三分の一もはかどらないのに、正面にすわった眼の左右を、遠近の景色は青く流れて、うしろへ、うしろへと速く通過してゆく感じなのであった。

部落の入りかかりの小山の頂上に、多賀さんという社がある。その石段わきの崖が、この間の大雨と出水とで、大きな地すべりをおこしていた。部落の男の子たちが、そこへかたまって、サンダワラを尻の下に敷いて、ウォータ・シュートのように辷りっこをしている。