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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
三人は警察の大玄関をのぼって行った。背の高い新しい伴れは、「案内」と英語の札が出ているところへ斜に片肱をかけて、用件を話し出した。年輩の巡査が、
「さあ、どうも……お気の毒さまですが、何しろ日に何万という旅客のことでして……」
うしろを向いて、同僚と何かうち合わせ、いやあすこは、もう入れまい、というような話をした。多くの旅館は、昨今慰安所になっているのだった。
「ひとつ、何とか御配慮願いたいもんですな……」
片肱をかけて話している伴れは、チョッキのポケットから巻煙草入れを出し、一本ぬいてゆっくり火をつけた。それはいかにも、相手にも、さア一本、と出すことになれている者らしい素ぶりである。全体が酒場の脚高椅子のわきに立っている身ごなしである。ひろ子は、すこしはなれた床の上にリュックをおろしてそれを眺め、好奇心を動かされた。几帳面で、渋ごのみの服装と、その男のどこやら伝法な裏の裏まで知っているとりなしとは不調和なようで、調和している。何を商売とする男なのだろう。
案内係との交渉が、望みうすなのを見ると、赧ら顔の支店長は、小柄な体を心配そうに動かしながら、誰にともなく、