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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
背中の重い荷物で体を二つに折り曲げ、気ぬけした表情の老若の兵士が、重荷で首をうしろへつられる関係上、誰も彼も上眼づかいで、のろのろと、遠くの山並は美しい旧街道を、停車場さして歩いて行った。その街道は五兵衛のところの裏からはじまっている。五兵衛一家やそのあたりのものが、おのずから敏い農民の眼で戦争の間から今日まで、どっさりのことを目撃して来たのは当然のことであった。
「牛肉や豚肉みたいなものまで、とり放題だったんですって」
主婦らしい羨望が小枝の声に響いた。その頃、一般の家庭ではどこでも、肉類などを買うことが出来ずにいた。
五兵衛は、小枝の報告ぶりをわきに立ってきいていたが、
「はア、たまげたね。まあ、無えつうもんはまず無えな。毛布だれ、軍靴だれ、石油、石鹸、純綿類から、全くよくもああ集めたったもんだ。民間に何一つ無えのは、あたり前だね、あれを見れば」
それを自分の眼で見て来た驚きを、披瀝した。
「話のほかよ。奴等、背負えるったけ背負って帰れ、って云わっちゃもんだから、はあ、わが体さ四十五貫くくりつけて、営門を這って出た豪傑があります」
「まあ」
小枝もひろ子も笑い出した。