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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
小柄な支店長の方はまだよかった。けれども、背のぐっと高いキャバレーの主人のやせた両脛は、白いズボン下を見せて殆んどむき出しになっていた。
「お寒かったでしょう、それじゃあ」
「いや、なに」
そういうものの、二人ながらそれぞれに閉口していることは一目瞭然であった。
又米を出しあって朝飯をして貰った。終ると男二人は前後して、降ったりやんだりの雨の中を駅まで様子みに行った。
一人になった部屋でひろ子は、くつろいだ。そして、きょうは十月十日だ、と思った。無期懲役だった重吉は自分の前にひらかれる扉の間を、どんな思いで通るだろう。自由になって、初めて踏む土は、重吉の草履の底からどんな工合にその心臓へ伝わることだろう。小一年監禁生活をさせられて急に外へ出たとき地べたが足の裏になじまなかった異様な感じを、ひろ子は思いおこした。そして、看守という伴のつかない一から十までの行動もその伸び伸びさが特別な感じであった。すべては重吉にとって新しく、世間そのものが十余年そこから生活を遮断されていた重吉にとっては新しいのだ。ひろ子には、その亢奮と、自覚するよりも大きい重吉の疲労とが、手にとるようにわかった。