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ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
小枝は、さっきから人参を貰いに出かけて留守である。少年たちの歓声は、午後の中に愈々高まり愈々燃え生きて育ってゆくものの生命の力に溢れている。ひろ子は嗚咽した。
母のこれからの暮し、つや子と子供らの生涯、ひろ子にとって、それらは、みんな自分の生活のなかのことであった。母はどれだけかの辛棒で、重吉たちのこれまでの生活からうける打撃を持ちこたえて来た。直次が居り進三が居る。それだからこそ、重吉もひろ子も云いつくせない安心があった。
母のこころのうちを思うと、ひろ子は、その手を頂いて額に当てたい気がした。
籐椅子のおいてあるところ迄来て、ひろ子はそこに腰かけた。同じ籐の小さい円卓の上に母の手紙をひろげたままおいた。
重吉は、このことについて何と考えるだろう。母は、おそらくひろ子に書いたと前後して、重吉にも手紙を出したにちがいない。
重吉が、母の見舞にゆくようにとひろ子に云っていたのは、久しい前からのことであった。母の住んでいる所が最近特別な軍事都市になって、バスの中にさえ憲兵と書いた腕章の兵士がきっと一人はのっていた。その空気を思うと、ひろ子は行き渋っていた。