轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ばんしゅうへいや
播州平野
宮本 百合子
「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页
ひろ子が駅から歩いてゆくと、ポンプ置場の前に一台、ベルの吊られた赤塗手押ポンプがひき出されていて、屈強な若い男たちがそのまわりにかたまっていた。その中に直次がいた。ひろ子を見つけて黙って笑いながらよって来た。今、そのポンプ置場のあたりも森閑として、人影もない。
ひろ子は、人通りのない狭い往還を北に向って歩み出した。半分ガラス戸のしまった理髪店。雑貨屋。精米所。商売をしていない菓子店。旅人宿。そういう店々が両側に一並び軒を連ねている。ひろ子は人通りこそ一人もないが、見えないどこかからか、往還を歩いてゆく自分の紺絣のもんぺ、さきの丸まっちい女学生靴、リュックに目じるしの赤ビロードの布はしが結びつけてあるのまで、すっかり見られていることを感じながら歩いて行った。
ほんの三四丁で、この往還は出はずれる。そのすこし手前に、重吉の家の土蔵が見えはじめた。土蔵の白壁がすこしはげ落ちている。
ひろ子は、胸がつまって来た。この土蔵の前から往還へ人々と旗とがあふれて、直次の第一回の出征が見送られた。その弟の進三が、母の登代と並んで実直な若者らしい体を正面に向けて入営記念写真をとられたのもこの道の上であった。