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ばんしゅうへいや

播州平野

宮本 百合子

「新日本文学」(第1~11節)、「潮流」(第16・17節)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 106,683 字 · 214 页

青空文庫

台所から燃木のもえる煙が匂っている。何年もの間ここへ来たとき見馴れ、ききなれているそれらの地方色にかかわらず、自分たち石田のうちのものの生活は変ってしまった。

東京を立つ前、ひろ子は土産ものをさがして銀座の三越へ入った。がらん洞に焼けた地階のほんの一部分だけを、ベニヤ板や間に合わせのショウ・ケースで区切って、当座の売場にしてあった。紙につつんだ丈の口紅や、紙袋入りの白粉が並べられたりしている。一方の隅に、アメリカのどんな避暑地にある日本土産品店よりも貧弱な日本品陳列場が出来ていた。白樺のへぎに、粗悪な絵具で京舞妓や富士山を描いた壁飾。けばけばしい色どりで胡魔化した大扇。ショウ・ケースに納められているのは、焼けのこったどこからか集めて来た観光客向の縮緬紙に印刷された広重の画や三つ目小僧がつづらから首を出している舌切雀のお伽草子類である。こんなものが商品と云えるのだろうかと怪しまれるような妙な金属の加工品、紐、網、安全カミソリが並べられている。光線の不充分な薄暗いベニヤ板の匂いのする売場の中に、どれ一つとしてまともでない物品のゴタゴタある店内の光景は、大都会の河岸に漂いよった生活のごみという感じを与えた。