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ぎたい
擬体
豊島 与志雄
「新潮」1952(昭和27)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,945 字 · 25 页
勝気で不感性めいた彼女に深入りしてると、これはとんでもないことになりそうだ、と警戒の念が起った。其後、青木は彼女を避けるようにした。
それだけの交渉だったのである。然し、石村は執拗だった。
「僕は、君が彼女を丸めこんで、何か情報を得ようとしてるのだと思ったが、違うかね。」
青木はただ唖然とするばかりだった。
石村は酔眼を据えて、じっと青木を見つめた。嘗て上海にいた頃、石村はよく相手の顔を凝視した。ぴたりと吸いつくようなその眼光には、人を威圧するものがあった。今では、丸刈にしていた頭髪を長めに伸ばし、白毛もだいぶ交っており、頬の肉は少し落ちていたが、青木にとっては、あの頃の眼光を久しぶりに見出した気がした。
青木は眼を外らして、ウイスキーをなめながら、口籠った。
「私には、何のことだか、よく分らないんですが……。」
「なに、分らない。」
だいぶ間が途切れた。
「いったい君は、今西を、何だと思ってるのかね。」
「それは、どういう意味ですか。」
「彼女の人物のことさ。」
「ここの社員でしょう。」
「社員は社員だが……。」
少し間を置いて、石村は打っつけるように言い出した。