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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

石子は面喰った。

「何をしているって、こちらに御厄介になっているんでしょう」

「それがね、誠に奇妙な人物なんですよ」

主人は顔をしかめながら、

「私の所に居る事になっているらしいのですが、滅多に姿を見せないのです」

「はてね、私はずっとこちらにいると思っていたんですが」

石子は主人の顔色を覗った。

「どうもそう見せかけているらしいのです」

主人は苦笑いしながら、

「時々郵便が来るのです。そして松下は三日目に一度位それを取りに来るのですよ」

「こちらとはどう云う関係なんですか」

「書生と云う事になっているんですがね」

主人の答えは益※(二の字点、1-2-22)意外である。

「つい二週間位前ですかしら、別に誰の紹介もなくブラリとやって来ましてね、写真が研究したいから門下生にして呉れと云うのです。私の所では住込で研究さしていろ/\雑用もさせる代りに少しばかり給料をやるのと、いくらか教授料を取って、通いで研究させるのと二種類あるのです」

竹内写真館主の話によると、その松下と名乗る男は早速束脩を納めて門下に加わったのだった。所が一向写真を研究しようともせず、前に云った通り三日目か四日目に彼宛に来る郵便物を取りに来るのだった。