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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「何にしても悪い事をする奴がなくなればいゝんだがなあ」

「そうなると僕達は飯の食上げだぜ」

「ハヽヽヽ」

「ハヽヽヽ」

二人は顔を見合して笑ったが、さて現実の問題として見ると、こんな呑気な事は云っていられなかった。

「兎に角、俺が、浅田を引っ張って来よう」

根岸が云った。

「そうかい、じゃお願いしようか。僕はもう少し支倉の旧悪の方を突ついて見よう。何と云って連れて来るんだい」

「無策の策と云うか、当って砕けろと云うか、別に口実なんか拵えないでやって見よう。対手も食えない奴だから下手な事は云わん方が好いだろう」

根岸と石子は別れ/\に白金と高輪に向った。

石子が高輪へ出かけたのは、そこの警察へ行って放火事件を委しく調べる為だった。

「さあ、無論記録にあるはあるでしょうがね、五、六年前に半焼一軒じゃ鳥渡さがすのに骨が折れましょうて」

係の巡査は首を捻った。

「今日は馬鹿に古い調物があるなあ」

隣にいた巡査がニヤ/\しながら云った。

「僕の方は三年前の仮埋葬死体の照会だ」

「え、三年前」

耳寄りな話だと石子刑事はその巡査の方を向いて聞いた。

「どう云うんですか」

「何ね、三年前にね、大崎の池田ヶ原の古井戸から女の死体が出ましてね、身許不明で大崎の共同墓地へ埋葬したんですがね、今日或地方から照会がありましてね、親心と云うものは有難いもの