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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「辞めるなんて云う程の大きな事じゃないじゃないか。君は今三年前の殺人で殆ど証拠が湮滅しかゝっている大事件の探査にかゝっとるのじゃないか。之しきの事にめげてどうするのだ」
「はい」
「間違いは間違いだ。大いに遣り給え」
「そう云って頂くと私も非常に心強いのです」
石子は感激しながら、
「遣ります。大いに遣ります」
石子は決心の色を面に浮べて、一礼すると勇気凜々と云う足取りで戸口に近づいた。
署長はその有様を快げに見送っていたが、何を思ったか声をかけた。
「あゝ、君、石子君、鳥渡待ち給え」
戸口から出ようとする所を呼び止められた石子刑事は微に不安の色を浮べながら戻って来た。
「何か御用ですか」
「うん、墓地の発掘の時には僕も行こう」
「えっ」
石子刑事は驚いて署長の顔を見上げた。
「僕も行って立会おう。その方が好い」
「然し署長殿」
主任は口を出した。
「あなたが行かれて、もし――」
「今度間違うと動きが取れなくなると云うのだろう。何全部俺が責任を負うさ。俺には失敗したからって部下の罪にするような卑怯な事は出来ない。だから出ても出なくても同じなのだ。俺が一緒と云う事は石子君を励ます上に於ても効果がある筈だ」