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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
人夫の後に従った石子刑事は少し遅れて大股に歩んで来る署長の方に振り向いた。
「こゝをもう一度掘らして見ます」
「宜かろう」
署長は大きくうなずいた。
はっしと許りに人夫はショベルを軟かい赤土に突込んだ。
周囲に立った署長初め三、四の警官は黙って人夫の手の動くのを見守っていた。
穴は次第に大きく開いた。
ショベルから勢いよく一塊りの赤黒い土が投げ出されると、バラ/\と細かい黄ろぽい土塊が代りに穴の中へ転げ込んだりした。
やがて穴の底には昨日のように白骨の一部が現われ出た。石子刑事は息を殺して白骨が次第にその全部を現わして来るのを見つめていた。
掘り出された白骨は殆ど完全に骨ばかりになっていた。棺も着衣も腐朽して殆ど痕跡を止めない程だった。只屍体の背部の恰度屍体の下敷になっていたと思われる部分に、少しばかりボロボロになった布片が残っていた。
石子刑事は注意深くその布片を地上に拡げて見た。布片は二重になっていて、下敷になっているのは帯の一部らしく、上側のは着物の一部らしかった。帯と思われるものは黒ぽい色で、割に幅の広いものゝ一部と思われた。石子刑事は見る/\喜色を現わして、不安そうに白骨を眺めている大島主任を呼びかけた。