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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

渡辺はニヤ/\と笑った。

「随分しつこいのね、警察と云う所は」

お篠はそろ/\声を上げ出した。

「又、支倉さんから来た手紙を探しに来たのかい。一日のうちに二度も来るのね」

「おい、静かにしろ」

浅田は低い声で叱るように云って、刑事の方を向いた。

「旦那どうぞお気にされないように願います。いつでもこう云う奴なんですから」

「この方は刑事じゃないの」

お篠は不安そうに夫の顔を見上げながら聞いた。

「刑事さんだよ。用があってお出でなすったんだよ」

「どう云う用?」

「お前が云ったように支倉さんから来る手紙を押えにさ」

「まあ」

お篠は大きく眼を見開いた。

「そんなら断って終えば好いのに」

「所がそうは行かなくなったんだ。支倉さんの手紙が手に這入るまで旦那は泊り込むんだよ」

「まあ」

「ちょっ、そう驚いて許りいないで、茶でも出せ」

浅田はそう云って長火鉢の前にどっかと坐った。

渡辺刑事が支倉から来る手紙を押収すべく浅田の家に乗り込んだ時に、石子刑事はトボ/\と蔵前通りを歩いていた。

二度目に発掘した屍体は幸にも専門家の鑑定によって、年の若い女と決定した。そして髑髏に際立ってニッキリはえている二本の犬歯はまるで牙のようで、それが死んだ小林貞の特徴とピタリと合っていた。