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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

窓の外には僅かばかりの庭があって、ヒョロ/\と数本の庭木が立っていたが、枝から枝へとガサゴソと小鳥が飛んでいた。時折チヨ/\と鳴く声が室内へ洩れ聞えて来た。

三人は無言のまゝじっと控えていた。

やがて扉が開いて、面窶れのした支倉の妻の静子が刑事に附添われながら、蒼白い顔をうな垂れて這入って来た。彼女は室内に這入ると、そのまゝベタンと板の間の上へ坐って頭も得上げず、作りつけた人形のようにじっとしていた。後れ毛が白い頸の上で微に戦いていた。神戸牧師は意味もなくそんなものを見つめていた。

附添って来た刑事は直ぐ出て行ったが、やがて又そわ/\と這入って来て、中の有様を見渡すと又出て行ったりした。そんな事が何となく物々しく感ぜられて、やがて起ろうとする事件を暗示して、異様な静けさが一座の人々に息苦しい緊張を与えるのだった。

物狂わしい沈黙が数分間続いた。

コツ/\と云う忍びやかな足音が聞えて来た。

やがて扉がスーッと開いて、腰縄を打たれた支倉が悄然と這入って来た。石子と渡辺の二刑事が彼の背後に従っていた。

彼は命ぜられるまゝに署長と神戸牧師の前にあった椅子に腰を下して、じっと頭を下げていた。