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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
最早数年来隠し切っていた罪を腹から出して終った以上、面目がないも何にもないではないか。却って今日は晴々した気持だろう。殊に基督教はかゝる場合に分る筈である。基督は罪ある者の為に来り罪ある者と共に死なれた。この同情の救主を頼りにする意味の分るのは今である。潔く信仰を以て検事局へ行き給え」
ウイリヤムソンも続いて云った。
「キリストの十字架の両側にいた盗賊すらキリストに救われた。それを能く思って下さい」
神戸、ウイリヤムソン両牧師から、懺悔の為に既に罪は救われたから、清き信仰の生活に這入って潔く法の裁きを受けるように諭されて、支倉はじっと頭を下げたまゝ、両眼からハラ/\と涙を流して、声を忍んで泣いていた。
静子は涙に濡れた蒼ざめた顔をつと上げた。
ともすれば籠み上げて来る鳴咽を噛みしめながら、腸のちぎれるような声を振り絞って夫に向って、訴えるように、励ますように、掻口説くのだった。
「あなた。今のお二人の御教えをお聞きになりましたか。あの通りでございます。私は何にも申上げる事はございませぬ。どうぞ今お二人が仰られたお心持で行って下さい。後の事はどうぞ決して気に懸けて下さいますな。