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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
三月二十九日支倉の妻静子は予審廷に召喚せられて、参考人として古我判事に訊問せられた。
神楽坂署で夫の恐ろしい罪の自白を聞いて、既に覚悟はしていたけれども、こうして改めて予審廷に呼び出されると、彼女は新な涙に誘われて、天帝の無慙な試練に歯を喰いしばってこらえているのだった。
問 其方は支倉喜平の妻か。
答 そうです。
問 いつ夫婦になったか。
答 明治四十三年十一月夫婦になりました。其翌年頃入籍いたしました。
あゝ、此の答えによると彼女は支倉が四度目の刑を終って出獄して間もなく結婚しているのである。
当時彼女は十九歳だったのである。
問 どこで夫婦になったか。
答 秋田県小坂鉱山の私の実家でした。支倉が当時横浜市の聖書会社に勤め、聖書販売旁伝道の為め小坂鉱山に参り、教会にいました信者の世話で親が結婚の約束をしたのです。私は十九歳でした。
問 喜平が窃盗犯により入獄した事を聞いたか。
答 前科ある事は此度神楽坂警察署で初めて知りました。宗教家は間違いないものだと云う事を聞き夫婦になったのです、前科ある事を私に話ませんでした。
あゝ、何と哀れなる彼女ではないか。