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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

それに支倉は何とて小林貞を病院へ連れて行く筈がない。こゝに裁判所へ廻ってからの立証道を見出したのであります。

警 それから病院を辞して何処へ行ったか。

答 一と当惑、暫し思案の結果新宿へ行ったと申し立てゝあります。

支倉の上願書は原稿紙四百字詰に直して、約四十四、五枚、之を半紙へ筆で書いたのだから、その手数さえ一通りではない。それが首尾一貫して字体から行の配りまでキチンとしている。前に述べた通り誤字脱字は殆どない。未決監に閉じ籠められて、暇に飽かして書いたと云い条、その根気には驚かざるを得ない。加うるに神楽坂署に於ける取調の模様を逐一暗記しているのは驚く外はない。

以下上願書の続きである。

警 新宿に行って何処で昼食を食べたか。

答 新宿二丁目の或そばやで二十銭の天丼を食べたと申立てゝあります。

現にそんなそばやはありません。神楽坂署より直ぐ調べられましたが、わからんのです。殊にその当時病気にかゝっているものが、天丼を食う筈はないのです。脂気のものは淋病には大敵なのであります。

警 それからどうした。

答 川安に連れて行ったと申立てようと思いましたが、川安に行っていると申して、直ぐ探偵の結果連れて行き居らぬと云うことが分ると、頭蓋骨との接吻々々。