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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

はなかったのだ。

それを聞き知った支倉は、神戸牧師が庄司署長を庇護する為に彼に不利益な証言をしたと怒号し出したのである。

卑しくも人一人の生命に係る事を、高が高等学校を同じゅうした位の縁故で、法廷に於ける証言を、殊に牧師の身にある人が抂げると云う理由がない。支倉の僻みだろうと思われる。

所で同じ高等学校の出身と云う事について一寸面白い挿話があるからこゝに書いて置こう。

支倉事件よりずっと後に、某省の官吏だった山田健と云う男が御用商人を野球用のバットで撲り殺した事件は読者諸君の記憶に尚新なる所だろう。あの山田と云う男が庄司利喜太郎とやはり高等学校を同じゅうした、ずっと後進なのだ。彼は後に身を誤ったが、世話好きな豪傑肌の男だったと見え、よく友人の尻拭などをしてやったもので、或る時友人の一人が酔った余り乱暴を働いて警察に留置され、事が面倒になったので、山田は母校の先輩である当時警視庁の官房主事をしていた庄司氏を訪ねて、援助を乞うた。庄司氏も事柄が高が酔興の失敗位だったので、その際の警察の署長に話してやって、学生を放免させた。

その後暫くしてから山田は又々真蒼な顔をして、警視庁を訪ね庄司主事に面会を求め、友人が人殺しをして発覚しそうになっている。