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はせくらじけん

支倉事件

甲賀 三郎

「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页

青空文庫

「先刻からのお話では、私が何か支倉を憎んでゝもいるように取れますが、もしそう云うお考えだと飛んでもない事で、私は決して彼を憎んでは居りません。十分憐憫の情は持っている積りです。然し宗教家としての私は、法律上の罪人として彼に干渉する事は出来ないと思うのですが。それとも彼は全然冤罪であると云う確証でもお持ちなのでしょうか」

「いや、決してそうじゃないのです。私も彼が悪人であると云う事は十分認めているのです。然し、悪人なればこそ、一層救ってやる必要はないでしょうか」

「悪人を救ってやる事には異議はありませんが、それは宗教の関係している範囲で、法律上の事に及ぼす事は出来ないと思います」

神戸牧師はいつになく熱して来た。

「然し」

木藤大尉も屈しなかった。

「法律上の罪人でも救う道はあると思います。例えばユーゴーの小説レ・ミゼラブル中のミリエル僧正がジャン・バル・ジャンを救ったようにですね」

「あなたは何か誤解をして居られませんか」

神戸牧師は大尉の顔を見ながら云った。

「支倉は獄中から度々私に手紙を寄越して、『神戸さん、あなたは牧師だったら、ホントの事を云って下さい』