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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
「警察には髑髏が二つあったと云うではないか」
能勢弁護人は石子刑事を睨めつけるようにして云った。
「そんな事はありません」
石子は眉をひそめながら答えた。
「いゝや、被告は確に髑髏を二つ見せられたと云っている」
「そんな事はありません」
「被告の妻にも髑髏を見せたではないか」
「私は知りません」
「髑髏を被告に突つけて嘗て見ろと云ったではないか」
髑髏を嘗さしたではないかと云う能勢弁護士の詰問に、証人石子刑事は静かに答えた。
「誰か外の者がそう云う事を遣りましたかどうか知りませんが、私はやりません」
「ふむ、では証人はその骸骨を弄んだ事はないと云うのか」
「鑑定に持出すので、二、三度刑事部屋で弄んだ事はあります」
「それでは証人は被告が警察署で警官の前でいじっているのを見た事があるか」
「ありません」
「証人は被告を警察で打ったり蹴ったりして調べたではないか」
「そんな事は決してありません」
石子刑事の訊問は従来嘗て見ない程詳細に長時間に亘って試みられた。然し石子刑事は拷問の件は極力否認するし、それに何と云っても大島司法主任、根岸刑事の二人が既に死んでいるのが、支倉に取って不利だった。