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はせくらじけん
支倉事件
甲賀 三郎
「読売新聞」1927(昭和2)年1月15日~6月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 204,697 字 · 406 页
支倉の這入る所か出て来る所を押えるのが一番好いが、こんな狭い往来で身体を隠す所がないので困る。流石の根岸も思案に暮れていた。
思案に暮れながらふと教会の裏口に眼を見やると、二重廻しに身を包んだ怪しい人影が忍び寄るのが見えた。あっと云う間にすっと中へ消えて終った。根岸刑事は緊張した。彼はそっと裏口に近寄った。
が、流石の根岸刑事も、彼が裏口に忍び寄った瞬間に曲者は家の中を素通りして、早くも表へ飛出したのには気がつかなかった。
玄関の所で曲者は、後について来た静子を濁声で叱った。
「馬鹿! 尾行られて来たじゃないか。刑事らしい奴が裏口の方にいる。仕方がない、俺は直ぐ行く。実印を浅田に渡せ。いいか分ったか」
「あ、あなた、もう逃げるのは止して下さい」
静子はあわてゝ彼の袖を引張ったが、曲者は袖を振払って表へ飛出すと、折柄の夕暗にまぎれていずくともなく消え失せた。
素人探偵
麻布一之橋から白金台の方へ這入って行く、細々とした店舗が目白押しに軒を並べている狭苦しい通りから、少し横丁に這入った三光町の一角に、町相応の古ぼけた写真館が建っていた。