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ほうろう

放浪

織田 作之助

「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,614 字 · 47 页

青空文庫

それと気付いて引止めてくれるなり、優しい言葉を掛けてくれるなりしてくれたら思い止まりたかったが、肚の中を読んでくれないから随分張合がなく、暫くぐずついていたが、結局、着物を着変えたからには飛び出すより仕方ない、そんな気持でしょんぼり家を出た。

あとで、叔母は、悪い奴にそゝのかされて家出しよりましてんと言いふらした。家出という言葉が好きであった。叔父は、身代譲ったろうと思てたのに、阿呆んだら奴がと、之は本音らしかった。美津子は、当分外出もはゞかられるようで、何かいやな気がして、ふくれていた。また、順平に飛び出されてみると体裁もわるいが、しかし、ほんの少し心淋しい気も感じられた。しつこく迫っていた順平に、いつかは許してもよいという気があるいは心の底にあったのではないかと思われて、しかし之は余りに滑稽な空想だと直ぐ打ち消した。

順平は千日前金刀比羅裏の安宿に泊った。どういう気持で丸亀を飛び出したのか自分でも納得出来ず、所詮は狂言めいたものかも知れなかった。紺絣の着物を買い、良家のぼん/\みたいにぶら/\何の当てもなく遊びまわった。昼は千日前や道頓堀の活動小屋へ行った。