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ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,614 字 · 47 页
どこの馬の骨か分らんようなでん公の種を宿して、認知もしてもらえんで、子供に肩身の狭い想いをさせるより、表具屋の息子が一寸間ァが抜けてるのを倖い、しつこくもちかけて逐電し、表具屋の子やと否応はいわせず、晴れて夫婦になれば、お腹の子もなんぼう倖せや分らへん。そんな肚で逐電したのを因縁つけて、オイチョの北さん、あんたどない色つけてくれる気や。そんな不貞くされに負ける自分ではなかったが、父性愛というんやろか、それとも、一緒にいた女にたとえ何もしやへんという白を阿呆になって真にうけたにしろ、今更惚れ直したんやろか、気が折れて、仕込んで来た売屋の元も切れ、宿賃も嵩んで来たまゝに小鈴はそこで女中に雇われ、自分は馴々しく人に物いえる腕を頼りにそこの客引きになることに話合いしたその日から法被着て桟橋に立つと、船から降りて来た若い二個連れの女の方へわざと凭れかゝるように寄りそうて、鞄をとり、ひっそりした離れで、はゞかりも近うございます、錠前つきの家族風呂もございますと連れこんで、チップもいれて三円の儲になった。金を貯めて、小鈴とやがて産れる子供と三人で地道に暮すつもりやと北田はいい、そして、高峰、お前も温泉場の料理屋へ板場にはいり、給金を貯めて、せめて海岸通りに焼鳥屋の屋台を張る位の甲斐性者になれと意見してくれた。