轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ほうろう
放浪
織田 作之助
「文學界 第七年第五号」文藝春秋、1940(昭和15)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 23,399 字 · 47 页
誰に教えられるともなく始めた寝る前の「お休み」がすっかり身についていた。色が黒いさかいと茶断ちをしている叔母に面と向って色が白いとお世辞を云うことも覚えた。また、しょっちゅう料理場でうろうろしていて、叔父からあれ取れこれ取ってくれと一寸した用事を吩咐られるのを待つという風であった。気をくばって家の容子を見ている内に、板場の腕を仕込んで、行末は美津子の聟にし身代も譲ってもよいという叔父の肚の中が読みとれていたからであろうか。
叔父は生れ故郷の四日市から大阪へ流れて来た時の所持金が僅か十六銭で、下寺町の坂で立ちん坊をして荷車の後押しをしたのを振出しに、土方、沖仲仕、飯屋の下廻り、板場、夜泣きうどん屋、関東煮の屋台などさまざまな商売を経て、今日、生国魂神社前に料理仕出し屋の一戸を構え、自分でも苦労人やと云いふらしているだけに、順平を仕込むのも、一人前の板場になるには先ず水を使うことから始めねばならぬと、寒中に氷の張ったバケツで皿洗いをさせ、また二度や三度指を切るのも承知の上で、大根をむかせて、けん(刺身のつま)の切り方を教えた。庖丁が狂って手を切ると、先ず、けんが赤うなってるぜといわれた。