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ほうろうさっかのぼうけん

放浪作家の冒険

西尾 正

「探偵春秋 第一巻第三号」春秋社、1936(昭和11)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,694 字 · 33 页

青空文庫

相手がのぞかれていることをしらない場合の隙見ほどおもしろいものはない。「隙見のトム」をきどりつつ、が、その場合にかぎりおもしろいなどという余裕のある気持でなく、むしろ機械的に、心中は戦々兢々と、その堺い目に吸いついてしまった。

なかは一瞥して自分の部屋でないことがわかった。というのは、そこは畳数にしていえば十二畳余のひろさで、つきあたりの壁まで約四間はあり、視野が隙間に応じて底辺三尺くらいの三角形にくりぬかれ、正面の壁際にベッドのなかばがみえ、そのうえで縄でしばられた女の真白な下半身が陸にあげられた魚のようにぴょんぴょんとびはねている。しかも、おれののぞいている鼻のさきにはひとりの黒服をきた男が、女の奇妙なありさまをじいっとみつめているらしく、二本の足が脚立のようにつったったまま微動だにしない。いったいなにごとがおこっているのだろうと、もちまえの好奇心が湧然とむらがりおこり、そっと体をずらせてななめに顔をおっつけ、女の顔をみるために必死の横目をつかったもんだ。ところがどうだ、そのベッドのうえでは殺人がおこなわれているではないか。

加害者は台上に膝をついて女の首にズボンのバンドをまき、ぐいぐいしめつけているので、確実な身長はわからなかったが、奇型といいたいほどの極端な小男で、しかも兇悪無惨な、おれはあんな