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せいじとさっかのげんじつ

政治と作家の現実

宮本 百合子

「文学」1947(昭和22)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,700 字 · 37 页

青空文庫

現代の民主的、または社会主義的文学は、リアリティーの把握を、現象と現象との間にある個体的連関の理解という範囲からひろげた。現象の個別的必然の底によこたわる社会的・階級的な歴史の必然をその実感の範囲にとりこむところまでのびてきている。個々の作家の社会的な生活感情は深められ、ひろがり、有機性を高めてきて、個々にあらわれる現象の普遍性を理解し、感じとり、生ける典型として把握するところまできているのである。この点は、とくに第二次世界大戦後の精神における顕著な動向である。人類の文化において、第二次世界大戦後、個人主義が地盤を縮小したということは、個人や個性が消滅したということではなくて、真に個性や価値や自由な発展を確保するためには、その個人の生きつつある社会が、民主的条件を現実にもっていることがどんなに重大であるかということを、学んだという意味なのである。個人生活はいや応なくおしひろげられていて、小市民風な保守の個人主義の枠内で、つじつまは合わせきれなくなってきている。個的財布の中の円が百分の一の価値になってきたという事実につながって、A氏B夫人の個的経験がいかに複雑微妙に個的であろうとも、このような異常な金の価値変化を正常になおすためには、個的経験の主張の範囲ではなんの方策も立て得ない。