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すうがくとごがく
数学と語学
寺田 寅彦
「東京帝国大学新聞」1929(昭和4)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,575 字 · 7 页
数学も実はやはり一種の語学のようなものである、いろいろなベグリッフがいろいろな記号符号で表わされ、それが一種の文法に従って配列されると、それが数理の国の人々の話す文句となり、つづる文章となる。もちろん、その言語の内容は、われわれ日常の言語のそれとはだいぶ毛色のちがったものである。しかし幾十百億年後の人間の言語が全部数学式の連続に似たものになりはしないかという空想をほんの少しばかりデヴェロープして考えてみると、この譬喩が必ずしも不当でない事がわかるかと思う。
言語はわれわれの話をするための道具であるが、またむしろ考えるための道具である。言語なしに「考える」ことはできそうもない。動物心理学者はなんと教えるかしらないが、私には牛馬や鳶烏が物を「考える」とは想像できない。考えの式を組み立てるための記号をもたないと思われるからである。聾唖者には音響の言語はないが、これに代わるべき動作の言語がちゃんと備わっているのである。
数学では最初に若干の公理前提を置いて、あとは論理に従って前提の中に含まれているものを分析し、分析したものを組み立ててゆくのであるが、われわれの言語によって考えを運んでゆく過程もかなりこれと似たところがある。