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ぶんかさい
文化祭
「小説新潮 第八巻第九号」1954(昭和29)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,978 字 · 28 页
駅までは歩けないし、途中には宿屋もないし、どうにも馬草村へ戻る以外に仕方がないらしい。
「村へ戻って泊るしかないわね」
「むろん、そうですよ」
「アナタ、夜道でも歩けるわね」
「イエ、ボクも全然見えませんが、なんとか歩いてみますから、ボクの背中につかまって下さい」
「不潔だわ。イヤよ」
「そうですか。じゃア帯の端を長く垂らしますから、それを握って、ついて来て下さい」
信二は先頭に立って歩きだしたが、月も星も見えない夜で、手さぐりでしか歩けない。手さぐりの速力では一町に一時間もかかるから、セッパつまった信二は思いきって四ツ這いになった。這う方がどれだけ確かで速いかわからない。七八丁の長距離を這い通して、ついに人家の明りに到着し、ここでチョーチンを借りて無事わが家へヤツ子を案内することができた。
ヤツ子は信二の四ツ這いには呆れたが、ついに人家に到着した根気と勇気には感服した。チョーチンの明りでチラと見たところでは、両膝から血をたらしている様子である。妖しい呼びかけを発するので色キチガイかと思ったが、真ッ暗闇で悪いこともしないので、案外紳士だなと見直した。そこで信二の家に到着したときには、親しい家へついたようにホッとしたばかりでなく、明るい電燈の下で再見した信二には今までとは別人の親友のようななつかしさも感じたのである。