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ぶんがくとちほうせい

文学と地方性

宮本 百合子

「文芸」1940(昭和15)年7月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,647 字 · 11 页

青空文庫

は、同感であると思う。特に素材主義の文学が正当な成長をとげ得ない社会的な理由にふれて、このことが云われているのも注意を惹かれる。火野葦平、上田広というような作家たちが都会生活にとどまらないで、それぞれの故郷でもとからの職業に復して、その上で文学の仕事をしてゆく態度への筆者の肯定も理解される。

そして、「若い人」「麦死なず」その他から今日の石坂氏の作家としての東京でのありようを考え、地方生活と作家の成長との関係を思っていた折から、自分としては、ここに石坂氏と背中あわせの形で作家としての火野氏や上田氏があらわしている地方性と文学との問題を感じるのである。

農民作家の文学における意味については、農民文学云々と喧伝される初めから、恐らく多くの人々が、永年の都会住居で揉まれた揚句の農民作家としての再出現に対して或る疑問を抱いているだろうと思われる。それが手軽く今度は南洋へという風に動くのも、文学の必然の稀薄さのあらわれと云える。それならば、農民の生活を描こうとする作家は、みんなそれぞれの故郷の田舎に一人の農民としての日々を暮しつつ、その上で作品をかいて行ったらよいだろうと思えるし、それがいいにちがいはないけれども、いざ実行して見るとそこに沢山の困難が横わっている。