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ぶんがくとせいかつ

文学と生活

宮本 百合子

「入門文学講座 第三巻」新日本文学会、1950(昭和25)年3月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 17,476 字 · 34 页

青空文庫

組合内家庭内の封建的な習慣もまだなくなっていない。

だから、かりに職場で、進んだ労働者としての経験を通じて愛し合うようになり、結婚しようとする若いひとくみの男女が互の間では、随分進歩した協力的な生活設計を考えられるとして、二人ともが失業した場合、また結婚しても、どちらかがあいての親たちの生活扶助をつづけなければならないようなとき、とくに女の側にこの条件があるとき、事情ははなはだいりこんでくる。

このような場合の苦しいいきさつを、徳永直の「はたらく人々」はアサという植字の婦人労働者を女主人公として、こくめいに描きだしている。いまから十年前にかかれたこの小説を、きょうの印刷工場に働いている若い婦人労働者、アサに似たような家庭条件でこれから結婚しようとしている若い婦人労働者がいてよんだとしたら、そのひとはどんな感想にうたれるだろう。

モーパッサンの「女の一生」にはっきり古典を感じた彼女は、アサのような「女の一生」を自分の明日にうけとりたいと思わないだろうと思う。この小説に描かれている山岸アサが生きたよりもっと、ちがった生活をもちたいと切実にねがうにつれ、彼と彼女とは、組合の力が現実にどこまで労働者の生活を改善しているか、ということについても考えずにいられないだろう。