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ぶんがくにおけるふるいもの・あたらしいもの
文学における古いもの・新しいもの
宮本 百合子
「風雲」について
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 5,257 字 · 11 页
「風雲」の作者が、その真率でたゆみない天質によって、社会現象に対しては常にまともから相応ずる生き方で、今日までを打ち貫いて来ていることは、作品を一読して、その基調を明かに感じるのである。それでいながら、この作者には、口を開いてそのような経験を語るとき、直接、現実の摩擦によって生じた感情の優しい風、こわい嵐を作品へふきつけることをせず、むしろその感情の余韻をめぐって縷々多弁になる癖がある。そういう場合、私どもはそこに髣髴と浮き上って来て未だ新たな内容にまで高められ切れぬままのこっている作者の過去のタイプの文学的教養を感じるのである。
「風雲」の文章の一つ一つについて見れば、それはことごとく刻苦せられている。一字もゆるがせにされておらず、それぞれの切先をもっているものであるが、全篇の効果としては、主題の立体面を余りこまかい網でかぶせてしまい、ついに作品を作者があらわすよりは遙かに簡勁でないものとしてしまっている。
作者はこの「風雲」において、主題の継承化のために必要な文章とは全く本質において違う文脈に属する文章の俳句風な含蓄、語らずして推察させようとする省略法の誤った使用などによって、知らず知らず煩わされていることを強く感じるのである。