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ぶんがくについて

文学について

宮本 百合子

「文化評論」1967(昭和42)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,949 字 · 14 页

青空文庫

によってのみおおおうとしている古いヨーロッパとの対比も描かれています。これらには労働者の階級的勝利への確信とソヴェト同盟への深い信頼が貫れています。こういう階級性は決して作品の具体的な世界から遊離した観念としてのべられているのではなく、作品の血肉として消化され、芸術として形づくられています。主人公は、まだ階級的に目ざめつつある過程が描かれているのですから、まだ共産主義者として行動していないのは小説として当然のなりゆきで、その点をもって小説全体に階級性がないということは当っていません。

長篇の今後の展開の中で主人公は共産主義者として行動し、そこには過去十数年間日本の人民の蒙った抑圧と戦争への狩り立て、党内スパイの挑発事件、公判闘争なども描かれます。このような作品は日本の労働者階級の文学に新しい局面をひらいているということはたしかだと思います。ブルジョア文学が横光利一の「旅愁」のように、ヨーロッパをブルジョア民族主義の立場から書いた作品が広汎によまれている日本で、「道標」をふくむ一連の作品が闘争の階級的武器として一定の役割を果すことを信じています。