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ぶんがくにあらわれたるとうほくちほうのちほうしょく

文学に現れたる東北地方の地方色

佐左木 俊郎

(仙台放送局放送原稿)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,298 字 · 13 页

青空文庫

春の黄昏近く、開けつぱなした広い土間から美しい八郎潟の景色がみられる。

謙吉が土間に轉つてゐる木臼に腰かけて、湖の方に眼をやりながら、ぼんやり考へこんでゐる。近くにお銀が立つてゐる。

間――。

遠く湖面を帆かけた小舟がのんびり通りすぎる。

蛙の声。」

これは『牝鶏』の冒頭の説明でありまして、これだけでは地方色も何もありませんが、舞台の背景となりまして私達の眼の前に展けますと、私達はそこから判然とその地方色を感じさせられます。

金子洋文『鴎』

「鯡船が河に十数艘入港つた、鯡がピラミツド型に波止場の各所に積みあげられた。

鴎が海を越えて何処からとなく集つて来た、そして低い空をきやんきやん鳴きながら飛びまはつた。その下で古川町の子供等が鯡を盗んだ。

日曜で好い天気であつた、風が相変らず冷たかつたが、柳小路の奥の土藏が三つ額をあつめてゐる空地は、雪を吸ひこんだ新しい土がぽかついて、いいにほひがしてゐた。

子供等は一人もしくじらなかつた。前掛の中にそれぞれ四疋の鯡をしのばせて帰つて来た。そこで空き地に遊んでゐた鳩を追ひ拂つて、そこへ藁莚を敷いて皆が坐ることにした。