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ぶんがくのひろがり

文学のひろがり

宮本 百合子

そこにある科学と文学とのいきさつ

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,445 字 · 9 页

青空文庫

科学上の知識が、その人々の天性に豊かにめぐまれている、創造、想像の力と結びつこうと欲求されるとき、本質としては架空に主観的にシチュエーションをきめて物語を展開させられる探偵小説へ表現をもとめてゆく第一の理由は、今日の文化感覚のなかでまだ科学と文学とが、一方は非人間的な、純客観的なもの、一方は人間的な主観的なものという二元的観念の支配がつよく存在しているためであろうと思う。社会の一般文化の現実が比較的貧寒であって、科学の諸分野そのものの到達点、そのものの理解、利用面が十分柔軟寛闊に開拓されておらず、同時に所謂科学というものが、旧式の考えかたで、そこに作用する人間性を全く排除しているため、勢い科学と文学との手近な接合点が探偵小説というようなジャンルに求められるのだと考えられる。科学現象は純客観的なものであるにしろ、その純客観的な科学の現象にかかわってゆく際の人間的要因というものこそ、科学が人間の生活圏の中に存在するモメントをなしている筈だ。どうして、そういうモメントにおいて、科学と文学とが渾然とした統一におかれた作品がないのであろうか。

云ってみれば文化の科学性そのものの弱さと、発揚の場面の限界の狭さとが文化の社会的な性格をもってここにあらわれているのだと思う。