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ぶんがくのたいりくてきせいかくについて
文学の大陸的性格について
宮本 百合子
「月刊文章」1940(昭和15)年11月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 4,628 字 · 9 页
ゆくほど厚顔でもあり得ないアメリカの普通人の悲劇を描く作家と思える。ドライサアが世界の歴史の転変に対して作家としてもっている限界について云われた理由もそこに在ったのだとわかる。今度読んで特別心に刻まれたのは、それらのドライサアの作家としての特質が、アメリカという大陸の社会生活の血液循環に何とはっきり養われているかという点についてのおどろきである。
バルザックの作品の深さ大さにふれるとき、私たちは作家バルザックの個人としての生活力の逞しさ旺盛さに面を打たれ、同時に十九世紀のフランスという時代の力づよい飛沫を顔に浴びる。
ドライサアの作品が感じさせる底なしのようなアメリカ生活の蠢きの圧力感は、一個ドライサアのものではなくて、単に世紀のものでもなくて、アメリカという広大な土地の上に複雑を極めて交錯する現代社会の矛盾の姿であって、同じ矛盾は各国にあるのだが、アメリカは大陸であるという独自な生理で、その血液の流れ工合で文学が肉づけられていることを痛切に感じるのである。
日本で大陸文学ということが云われはじめて二年ほどになるが、文学のこととしてさまざまの問題が包含されていて、そのことが心に在って、ドライサアの作品は一層新しい暗示をもったのであったと思う。